「経過は順調のようだな」
シリウス本部の、第一会議室。
そこに、三つの人影があった。
ここは、シリウス関係者でも、最高幹部の人間しか使えない部屋である。
つまり、ここにいる三人こそが、シリウスの統括者なのだ。
「ジェミニ=結城が部隊に加わるのは誤算だったが、どうやらかえってそれが功をそうしたようだな」
「しかし、あれだけの逸材を失うのは、少々惜しいな」
「かまいませんわ。シリウスが新たな行政機関となるためでしたら、安いものです」
そして、ゆっくりと笑みを浮かべる。
ぞっとするような、凄惨な表情。
「それに、彼の思考パターンや知識データベースは既に完成しています」
「ほう? 随分と手回しの良い。一体いつの間に?」
「データ採取だけなら、一時間もあれば十分です。彼がシリウスに滞在していた期間を考えれば、十分過ぎますでしょう?」
「なるほど、確かに」
「彼も、まさかそのような事になっているとは気づいていないでしょう」
彼女の笑みにつられ、二人の男が微笑する。
「ところで、前から訊きたかったのだが。どうして貴方は、彼らの前では“ファウスト”などと名乗るのかね?」
「彼らが“セカンド”ならば、私達は“ファースト”だろう? それだけの事さ」
「貴方も、相も変わらず笑えない冗談がお好きだ」
「ユーモアのない人生は、あまりに味気なさ過ぎる」
「貴方らしい」
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