「未だに逆らう人間がいるとはな」
「テロリストも、依然として地下にでも潜伏しているのでしょう」
国会議事堂内の一室。
そこに、二十数名の人影が円形に席を並べている。
「ナノ・コードナンバーは検索できたのか?」
「いや。どうやら、ナノ・コードを持たない人間のようだ」
「となると、爆破排除は出来ないか。我々が直接手を下さねば」
「そういえば、ナノ・コードのなかった時代は、よくテロ狩りのゲームをやっていたものだな」
「結局は、いつも東郷派に勝たれていたがね」
ぽつりぽつり、と微苦笑が上がる。
と、宙に浮かんだホログラフウィンドウに目を向ける。
そこに映し出されていたのは、先ほどシステムセンターの防犯カメラが捉えた映像だった。
「おや? あれは確か……。東郷君、懐かしい顔があるよ?」
一同の視線が、一角に佇む一人の青年に向けられる。
老人達の中に、ただ一人の若い姿。
それだけでも彼は、十分に異彩を放っている。
「ええ。確か……そう、五年ぶりになりますね」
懐かしむような微笑。
しかし、その眼差しは鷹のように鋭い。
「あの時の子供が、今や国家的犯罪者。月日の流れとは面白いものですね」
ゆっくりと青年は立ち上がる。
「どうしたのかね?」
「彼の方から現れたのです。私が直々に相手をするのも礼儀でしょう」
そう微笑し、
「それに、彼も私に話があると思いますから」
意味深な表情。
しかし、その目は深く暗く、不気味な光を放っている。
「では、一つゲームをしましょう。単位は億です」
青年の提案に、一同が一斉に興味を示す。
「ほう、それはまた楽しみな」
「それで、賭けの対象はなにかね?」
「今回は、実に面白い趣向を凝らせて戴きました。皆さんにも必ずや楽しんでいただける事でしょう」
RUN