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もうそろそろ夜が明けるだろうか。天井近くにある小さな採光窓が白み、物置の中が少しだけ明るくなって来たので、そう僕は思った。一番寒くなるこの時間に、まこちゃんは僕のすぐ横で壁にもたれ膝を抱えながら静かに眠っている。あいつらに沢山叩かれたりしてずっと泣いていたから、まだ目元が濡れてかぶれたようになったままだ。まこちゃんは布団も何も被らないで寝ているけれど、まだそんなに冷え込まない季節だから良かったと思う。本当に、たったそれだけが幸運だ。
僕は少しだけ眠れはしたけれど、体が痛くてあまり休んだ気にはなれなかった。背中を強く打ってから呼吸も少し苦しい。はっきり言って、見込みが甘かったのだと思う。今も物置の外にいるあの連中、その一人にも勝てなかったのは、食らい付けば何とかなるはずだと自分を過信したせいだ。
あいつらが来てから、パパさんもママさんもまだ帰って来ていない。パパさんはいつも仕事が忙しくて帰りが遅いけれど、まこちゃんを置き去りにするはずがない。きっとママさんとあいつらを追い出す準備をしているからだと思うけど、もう時間はあまり無い。悠長な事が出来る状況ではなくなったのだ。
夜が明けたらいよいよ正念場だ。
今度こそは、おめおめと負けてしまう訳にはいかなかった。今の僕はただ疲れているだけではなく、怪我をしている上にお腹も空いている。水もずっと飲んでいない。とても普段のように動ける体調ではない。だけど、それがかえって良かったと思う。これだけ追い詰められている方が覚悟を決め易いからだ。
僕は耳を澄まして物置の戸の外に警戒する。戸は外から鍵をかけられて開けられないようになっているから、外から開けようとすれば必ず鍵を外す音がするはずなのだ。その間にまこちゃんを隅に遠ざけて、入ってきたらすぐさま飛び掛かる体勢を整える。相手を迎え撃つ時は腕を、そう前に居た所で教えられた。結局それ以上の事は教えられなかったけれど、今の僕の武器はこれで全部、心許なくともこれだけで何とかしなければならない。
パパさんが助けに来るそれまでの間、まこちゃんは僕が必ず守ってみせる。たとえ自分が死んでしまう事になってでもだ。それが、僕を引き取ってくれたパパさんと、お世話をしてくれたママさん、いつも遊んでくれるまこちゃんへの恩返しだと思うのだ。