アキレスと亀
蚕と銀行を経営する資産家の父親を持つ倉持真知寿は、趣味で絵画を買い漁る父親の影響からか、幼くして絵画に興味を持ち、日々描き続けてきた。
ある日、父親の会社が倒産し父親は自殺、真知寿は叔父の元に預けられるが母親もまた自殺を遂げてしまう。
天涯孤独の身となった真知寿だったが、それでも幼い頃から抱き続けていた画家になりたいという夢は捨てていなかった。
北野武監督の最新作。
今回は客の入る映画を撮る、と宣言していただけにそれなりに期待はして観に行ったのですが。とりあえず最初の印象として、この映画はもう北野映画らしさがさっぱり失われていてガッカリでした。
独特のカメラワークや引き画、表情と間、そして大小散りばめられる憂鬱になるような暗い要素、それらが良くも悪くも北野映画の味であり灰汁でもあるんだけど、それが悉く失われて、何の面白みも無い映像に成り下がっています。
主人公の真知寿の絵画に対する傾倒ぶりは異常で、確かに正気ではない異様なキャラにはなっていました。でも、それだけで2時間の尺を稼ぐのはあまりに無理がありすぎる。作中、画商が真知寿に対して散々「面白みが無い」「技術があれば誰でも描ける」「冒険心を持たないと」と言っているのが、まさにそのまま当てはまります。
昔の北野映画ほど素人っぽさがあって味があり、逆に印象に残る良い作品だったのだけど。もう近年は一体何をどうしたいのやら。なんかもうあれこれと見失っているような気がしてなりません。
とりあえず、個人的には2シーンほど、主人公の異常さを表現したシーンが好きでした。でも狂気と呼ぶよりは、単に真知寿が絵画以外に興味が無いせいからなのかもしれないけれど。
オススメ度は3−。完全なファン向けのレベル。過度に期待するとガッカリするレベル。
Posted: 9 月 20th, 2008 under 2008, 映画.
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