バジュランギおじさんと、小さな迷子
バラモン教の信徒であるパワンは、学力も無ければ相撲もできず父親には呆れられていた。しかし彼のただひたすら善良な人柄は多くの人から愛されていた。
ある日パワンは、親とはぐれた言葉の話せない少女と出会う。警察にも取り合ってもらえず仕方なく面倒を見ることにしたのだが、少女は実はインドと関係の良くないパキスタン人であり、パワンにとっては異教徒であるイスラム教徒であることを知る。
少女を正規のルートで親元に送り返す事が出来ないと知ったパワンは、パキスタンへの密入国を決意する。
インド人とパキスタン人、バラモンとイスラムという微妙な関係の二人を描いた作品。インド映画も大分日本にも馴染んできた頃かと思います。
迷子の少女を親元へ届けるという、大概の国なら警察に連絡すればそれで終わりという簡単な問題ですが。本作はその簡単な問題の解決を、宗教観や国家紛争と民族対立が高い壁となり阻んできます。こればかりはインドパキスタンの両国の歴史の問題であるため、一朝一夕にああしろこうしろで解決するようなものではありません。そういった根深い問題を抱える背景の中、この二人は驚くほど明るくポジティブに向かっていきます。基本的にこの映画はエンタメ色が強く、うじうじ悩み続けるとか皮肉を吐いて斜に構えるとかそういうひねくれが一切ありません。また宗教についても大きく関わっており、人を騙せば自分の首を締めるという大原則が高い確率で適用されるのも見どころです。一方でバカ正直なパワンは、そこはもっと融通を利かせろと言いたくなるような場面が多いのですが、結果的にその選択がラストで良い方向へ作用する辺り、因果応報の精神が根付いているのだなあと感じました。
大衆は憎しみにばかり飛びつく、というのは劇中でのキーマンの一人のセリフ。だからこそ人間愛の重要性を再確認させるかのような、終盤の熱い展開は本当に感動しました。ただその一方で、現実の印パは現在進行系で紛争中であり、人間愛を行動で示すというのは本当に難しいことなのだなとやや寂しくもあります。
オススメ度は5。とにかく王道で直球なエンターテイメント作品です。文字通り笑いあり涙ありで、何かしら心を揺さぶられたいという人にはオススメの一本です。
Posted: 3 月 2nd, 2019 under 2019, 映画.
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