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ヒトラーへの285枚の葉書

1940年、ナチスドイツはフランスを下し戦勝ムードに沸き立っていた。そんな最中、クヴァンゲル夫妻は最愛の息子が戦死したという知らせを受け取り悲嘆に暮れる。
夫婦は国を取り巻くヒトラー崇拝の雰囲気がたちまち耳障りの良い嘘に聞こえるようになり、やがて静かな憤りを行動で示すようになる。それは、葉書にヒトラーやナチス党に対して批判的な言葉を書き、人目につくような場所へこっそりと置いていくというものだった。


この作品は実際の出来事を元にした内容となっております。
とにかくナチスドイツを舞台にした映画は、ナチスの悪と虐げられる善の構図がはっきりしています。そして露骨な監視社会と同調圧力、そういった背景があるからこそ当時では反社会的とされる行為に対して強い緊張感があります。
本作は常にこの緊張感と隣合わせの展開です。一歩間違えればたちまち逮捕され死刑となる時勢、夫婦の静かな社会に対する反抗はあまりに割に合わないものです。しかし息子を奪われた事で自暴自棄になっているかと思えば案外理性的な部分もあり、気持ちの整理をつける意味も含まれた演出に思いました。葉書をこっそり置いていくやり方は作中の言葉を借りればロマンチックなものかも知れないけれど、それが思いもよらぬ事態を巻き起こし、そして結末はそれに対する贖罪の意味も込められていたのかと何となく思いました。
一つ気になったのが、舞台がドイツであるにもかかわらず言葉が英語であること。気にしなければ気にしないけれども、何となくここはどこの国だっけ?という違和感を覚えたりもしました。ドイツ系の役者を揃えてやるというのは難しかったのでしょうか。

オススメ度は4。なかなかに壮絶なラストではあるけれど、ある意味ロマンチストな映画でもあります。近代史の映画が好きな方なら満足できるのではないでしょうか。

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