象の背中
不動産会社部長の藤山幸弘は、病院での検査の結果末期の肺ガンである事を告知される。余命の目安は半年、しかし幸弘は延命治療を拒否する事を選択する。
秋元康初の長編小説が原作、主演は役所広司。
ガンとの闘病を通じ家族愛と人間ドラマを織り交ぜた感動巨編、なんて勝手な思い込みで観に行った訳です。
よくある感動を売り物にしたエンターテイメントは、難病やら事故やらで登場人物を殺して涙を頂戴するショボい演出を取るんですが、これもそれらと遠からじといったレベルでした。
役所広司の演技は確かに凄かった。末期患者の役作りのため10kgの減量したとか、そんなレベルではなく、余命を知ってしまった主人公の微妙な胸中を上手く自然体で表現していると思う。もう言う事は無い。
ただそれだけに、脚本の駄目さが残念であって。
一番気になったのが、主人公が延命治療を拒否した理由。「死ぬまでは生きていたい」じゃ理由にはならないでしょう。家族も納得する訳が無い。ただ、作中ではそれ以外の理由が語られないんですよね。本当にそれだけの理由で拒否したのなら、この主人公、かなり頭が弱いとしか思えない。また、それを尊重した周囲もどうかしてる。
岸部一徳や高橋克実はかなり良い味を出していた。特に岸部一徳。悪役ばかりしか印象に無い彼だけど、無愛想な兄役は実に見事だった。最後の会話するシーンは特に感慨深かった。
主人公には愛人がいるんだけど、その扱いもどうか。何で家族にはガンの事を中々打ち明けられず悩むのに、愛人にはさっさと話すのだろう? 別に話しても大丈夫な相手だからということ? その奇妙な存在のせいか、今ひとつ「生まれ変わってもプロポーズ」の部分が馴染めなかった。
結局は死んでお涙頂戴な内容。さじ加減は絶妙かもしれないが、それ以外の部分をウリにするならばむしろ主人公は殺さないままで終わらせた方が幾分かマシ。自分の主義で死を選んだって事はつまり男の美学だって事なんだろう。それが脚本を根本から歪めていると思う。
オススメ度は4。ほとんど役所広司を初めとする役者の演技で何とか成り立ってるような映画です。脚本は安いが役所広司の演技は良いので、そこが見所。ただし、実際にガンで亡くなった方が身内にいる方は絶対に見ない方が良いです。間違いなくヘドが出る。
Posted: 10 月 28th, 2007 under 2007, 映画.
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