蜩ノ記
羽根藩で祐筆を務めていた檀野庄三郎は、友人との諍いによる沙汰の減刑と引き換えに、向山村に幽閉されている戸田秋谷の監視を命じられる。戸田秋谷は元郡奉行だったが、江戸勤めの際に起こした不義密通の罪で１０年後の切腹を申し渡され、その日を待つ幽閉の身であった。戸田は家譜の編纂に携わっており、主家である三浦家の様々な裏事情も知っているため庄三郎の監視はその内容についてでもあった。
共に暮らす内に戸田の人柄に影響を受け始めた庄三郎は、次第に彼がありもしない罪を着ている事を確信する。それと同時期に、向山村では播磨屋との諍いが表面化していった。
主演は役所広司、岡田准一。
直木賞受賞した原作を元にした時代劇作品です。
主人公の庄三郎は、切腹まで残り三年の戸田秋谷の監視を命じられる訳ですが、その過程で少しずつ彼に対する理解と、状況の理不尽さや深まる謎についてあれこれと奔走を始めます。
庄三郎は基本的に実直な武士として描かれているのですが、個人的にはすぐに理不尽を口にする武家社会にあまり馴染んでいない、良くも悪くも清廉な人物に感じました。戸田秋谷は理由あってそうせざるを得ない身の上ですが、何故庄三郎はあそこまで義憤に駆られるのか、いささか疑問に思います。話を進めていく以上、そうせざるを得ないのかも知れませんが。
「戸田秋谷に一体何があったのか」これが物語の根底にあるポイントです。これを少しずつ紐解いていくのはミステリー作品にも似ていますが、そこら辺の謎はそんなに重きを置かず、結局の所武士としての生き様をどうするのかを模索していくような展開でした。そういった意味で、青臭さの残る主人公とその周囲の人物のやり取りは、さりげない言葉や仕草にも深い意味を感じたりと、感慨深い作品だったと思います。
本作では役所広司の久し振りの殺陣を見ることが出来ました。岡田准一も太刀捌きは非常に上手なのですが、殺陣は無かったのが些か残念でもあります。物語上、無理に捩じ込んでもおかしくなるだけだけども。
オススメ度は４＋。とても良い話の時代劇作品だったと思います。現代の価値観に置き換えるのは難しい部分もありますが、そういった部分も引っ括めて、色々と感慨深い気持ちにさせられる作品です。
Posted: 10 月 4th, 2014 under 2014, 映画.
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