風立ちぬ
幼い頃から飛行機に憧れを抱いていた堀越二郎は、いつしか飛行機設計士となる夢を抱く。念願叶い設計士となった二郎だったが、日本の航空技術は世界に比べ20年は劣っている事を痛感する。
それでも自分の思い描く美しい飛行機を形にするべく、日々奮闘する二郎。そんな中、かつての震災の際に知り合った少女、里見菜穂子と偶然の再会を果たす。
製作はジブリ、監督は宮崎駿。
零式艦上戦闘機、通称ゼロ戦と呼ばれた戦闘機を設計した実在の人物、堀越二郎を主人公とした物語。本作の登場人物である堀越二郎は、実在の人物ではあるものの、物語は基本的にはフィクションで架空の人物も大分登場しています。
飛行機に憧れを抱く少年、堀越二郎の半生を描いた、栄光と挫折の物語と思っていましたが、全体的に非常に淡々とした展開をする作品でした。また、序盤から夢の形での心象描写も多く、ある意味ではファンタジックな作品です。
二郎はとにかく飛行機に夢中で、そればかりしか頭に無いかと思えば、架空の人物である里見菜穂子とのロマンスもありました。ただ、これが実際の所非常にお粗末な内容です。結婚へ至るまでがあまりに唐突で、口にした理由も声優のせいだけでなくて白々しく聞こえ、またその後の移り住みについても、勢いでやってしまっている感が否めません。二郎は飛行機について狂気すら感じさせる執着がある訳でもなく、その割には菜穂子の扱いはあまり真っ当でも無いように思います。何より、里見菜穂子の心理描写が薄すぎて、何を考えているのかサッパリ分かりません。厭世的なのか、必死なのか、行動に一貫性が無いように見えるのが原因ではないでしょうか。
演出としての、背景の描写や登場人物の表情など、前述した薄い展開でもぐいぐい引き込んで来る魅力は、流石にジブリのものだと思います。特に見せ場も何も無いのだけれど、なんか飽きさせないというのは、やはり演出の力なのかも知れません。
宮崎駿監督は声優に本業の人を使わない事は有名ですが、正直なところ本作の二郎は明らかにミスキャストだと思いました。声と人物の乖離があまりに激しすぎます。抜擢した理由に「早口である」「滑舌がよい」「凛としている」とあるけれど、実際どれも当てはまりません。終始、ボーっとして何を言ってるのか分からないような印象しかありませんでした。ここを変えるだけでも、大分作品の完成度は変わったように思うのですが。
オススメ度は3。悪くはないんだけれど薦めにくいという、難物だと思います。子供向けではないのは確かだけれど、ではどの層向けなのかと問われると非常に返答に困ります。実際、ジブリブランドだけで観賞するというレベルではないでしょうか。
Posted: 7 月 20th, 2013 under 2013, 映画.
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